赤外線高分散ラボ:Laboratory of Infrared High-resolution spectroscopy

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星間空間に存在する大きな有機分子の吸収線を多数発見
(2015.02.16 掲載)

星間物質による減光を受けた恒星のスペクトルには、その恒星の大気に含まれる 原子・分子、イオンによる吸収線の他に、 星間空間に存在する有機分子が起源と考えられている「ぼやけた星間線(Diffuse Interstellar Band, DIB)」と呼ばれる、微弱な吸収線が多数みられます。 このDIBを引き起こしている物質は、その発見以来約1世紀もの間解明されておらず、天文学における最も古い「未解決問題」のひとつとして知られています。 その解明のためには、赤外線による観測が重要であることは長年指摘されてきましたが、 観測装置を実現する技術の困難によってこれまで精密な観測がなされてきませんでした。
今回、大学院生の濱野哲史さん(D3)を中心としたユニットは、LIHが開発した高感度赤外線高分散分光器「WINERED」を用いて、 0.91-1.36µmの赤外線波長帯の大規模なDIBの探査を世界で初めて行い、新たに15本のDIBを発見することに成功しました。 この結果は、これまで観測が難しかった減光の大きい分子雲などの環境において、 赤外線波長でのDIBの調査が可能であることを示したという点においても重要であり、 今後DIBの正体の解明や大きな有機分子の生成過程、さらには宇宙における「生命の起源」の解明につながることが期待されます。 この成果は、The Astrophysical Journal(オンライン版:2 月 20 日)に学術論文として掲載される予定です。


Cygnus nebula  DIB lines
今回の観測で顕著なDIBを検出したはくちょう座OB2星団(左図)と検出したDIBの候補となる有機分子(右図)

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